「2000件の注文が来たけど人がいない」お試し採用で人材確保、補助金で製造力強化
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「2000件の注文が来たけど人がいない」お試し採用で人材確保、補助金で製造力強化

能登町小木
📅創業:2009年(平成21年)
従業員:14名(うちパート12名)+ タイミー → パート転換1名
👤代表:浅井 和平
事業者名:株式会社和平商店

能登町小木でイカ刺し、一夜干し、イカせんべいなどの加工品を製造・販売している。親の代からリピーターが多い「いか刺し」「いかの鉄砲焼き」と、こだわりの二度焼きが特徴の「能登いか煎餅」など、全国から注文がある。補助金を活用して設備を購入した結果、煎餅の食感がより良くなるなど、商品のレベルアップにも意欲的に取り組んでいる。

取材日: 2026.02.13ライター: 河野 孝史

※掲載情報は執筆時点のものであり、制度内容は変更される場合があります。また、本事例は事業者の体験に基づくものであり、申請結果や補助金額を保証するものではありません。申請をご検討の際は、窓口で最新情報をご確認いただく事を推奨します。

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支援がもたらした変化

タイミーで2週間のお試し期間を設けて、相性の良い人を見つけパート雇用に切り替えた。若い人が来ると職場が面白くなった。営業再開支援補助金でトレーラーハウスを導入し、せんべい製造エリアを増床。小規模事業者持続化補助金で粉砕機を高性能化し、温風乾燥機を2台から3台に増設。想定外に、せんべいの食感がサクッと良くなった。
フェーズ 1

課題

震災前から慢性的な人手不足に悩んでいた。従業員12名のうちパートが10名で、高齢化も進んでいた。

今後のことを考えると、求人を出して働いてくれる人を増やしたい。だが、長期的に働いてくれる人を見つけるのは難しい。ハローワークで募集をかけても、応募はあるものの条件が合わないことが多かった。

従来から春先から夏前にかけて作業が集中しており、震災以降は復興支援での注文が急増、このままでは手に負えなくなる状況だった。

製造は既存のパートで回せるが、発送作業が追いつかない。特に運送会社が来る11時から14時までに、その日発送するものを準備しなければならない。短時間・繁忙期のみという働き方ができる人材確保の手段がなかった。

さらに、せんべいの売上が増加し、新たな課題が浮上した。梱包済み商品の置き場が不足し、温風乾燥機も2台では足りなくなった。製造スペースの拡張が急務となっていた。

加えて、商品力の課題もあった。粉砕機は業務用だがパワーが弱く、スルメの硬い部分がせんべいに残ってしまう。歯の弱い方から「スルメがちょっと残る」「硬い」という声があり、食感の改善が求められていた。

フェーズ 2

選択と決断

人手不足を銀行に相談していたところ、北國銀行と復興支援コーディネーターの方が1月に訪ねてきた。

「こんなのあるんですけど、忙しい時、人手足りない時にこういうのできますよ」それがタイミーだった。

最初は「タイミーって何?」と思った。だが、担当者から「いきなりそんな人って来ないから、徐々にお試しで出してマッチングする、うちと相性のいい人を見つけましょう」と提案された。

究極の二択

究極の二択

選択肢 A
ハローワークで募集する
  • これまでも応募はあった
決断
タイミーで「お試し採用」する

補助金

営業再開支援補助金, 小規模事業者持続化補助金

  • 2週間のお試し期間で相性を確認
  • 午前中だけの短時間勤務が可能
  • 相互評価で選べる仕組み

決め手:

3月から忙しくなる前に、2月後半からタイミーで募集して『どんな人が来てくれるのか』を試してみた。来てくれるのか、ちゃんと仕事してくれるのか、最初は分からなかったから。営業再開支援補助金や小規模事業者持続化補助金も、手続きは大変だけど、資料作成が得意な人に外注すれば進められる。自己資金だけでは設備投資は厳しいから、補助金を使うことにした。

フェーズ 3

行動と変化

2月後半にタイミーで募集を開始した。最初は「来るの?」「どんな人が来るの?」「ちゃんと仕事してくれるのかな?」と不安だった。

だが、想定外のことが起きた。

まず、多様な人材が来た。20代の若い人が半分くらい。小木に住む漁師の方は、朝方の漁を終えて8時頃に帰宅し、9時半から13時までの募集に応募してくれた。「隙間時間を活用してくれた」。

次に、若い人が職場に良い刺激を与えた。既存のパートの方が「どこから来たの?」と話しかけ、職場がちょっと面白くなった。「新しい風が入った」。

そして、相性の良い人材をパート雇用に転換できた。タイミーで何度も来てくれた人と話すうちに、その人の事情を知った。「全然違うところで正社員で働いてたけど、自分で事業立ち上げたい。でもいきなり収入を確保するのは難しいので、午前中はパートで働いて、午後は自分のやりたいことをする」。

お互いの条件が合った。

結果、タイミーで約2週間のお試し期間を経て、復興支援注文の出荷を乗り切った。製造は周りとのチームワークで行うため、タイミーではマッチングしなかった。発送は特殊ルールがあるものは既存スタッフが対応し、簡単なものはタイミーの方に任せるという分担で、うまくいった。

⚠️

申請する人が直面しやすい『実務の壁』

不安の壁(ちゃんと来てくれるのか?)

「来るの?」「どんな人が来るの?」「ちゃんと仕事してくれるのかな?」という不安があった。

応募者の質の壁(評価の低い人が大量応募)

2月に募集を出したら、いきなり全て同じ人(40代男性)が埋めた。評価を見たら、いいことが書いておらず不安になった。

業務の壁(製造は合わなかった)

製造業務は、チームワークと作業への慣れが必要で、教える側も時間が取られるため、スポットで入るタイミーには合わなかった。発送業務も、特殊なルールがあるものは既存スタッフが対応し、簡単なものを任せるように工夫した。

事務手続きの壁(補助金の資料作成が大変)

営業再開支援補助金や小規模事業者持続化補助金の申請は、資料作成が大変だった。事業計画書や見積書など、普段作らない書類を揃える必要があった。

壁の乗り越え方

▼ こうやって乗り越えた

  • タイミー担当者が「お試しで出してマッチングする人を見つけましょう」と提案してくれた
  • 求人の文面は全て担当者が作成してくれた
  • 評価の低い応募者については、担当者に相談したら「評価とかキャンセル率が何パーセント以上だとブロックしてもいい」というルールを教えてくれた
  • 「この人をブロックしても大丈夫です」とサポートが入った
  • 業務を発送に絞り、製造は既存パートで回すという役割分担をした
  • 補助金の資料作成は、得意な人に外注することで負担を軽減した
フェーズ 4

現在から未来へ

タイミー経由でパート雇用に切り替えた人が継続して働いてくれているため、現在はタイミーを半年ほど出していない。

長期的には、従業員の高齢化があるため「本当は(ハローワークに)出して、少しでも働いてくれる人がいればいいけど、なかなか来ないかな」という課題は残っている。

もう一つの不安は、観光客の戻りだ。震災前は「イカの駅つくモール」で売上が伸びて経営が安定していた。送料もかからず近場で売れるため、利益率も高かった。それがなくなってしまった。

やむをえず物産展に行く状況だが、催事は利益につながりにくいこともあり、半分宣伝でやっている。観光客に購入いただくのが一番だが、震災前への戻りが不安だ。

さらに、今後ますますスルメイカ漁師が減少し、イカの高騰も懸念される。原材料の確保も課題となっている。

📖

再起の裏側:社長の試行錯誤

スポット雇用でお願いできることの見極め

はじめはふるさと納税の発送がメインで単純でした。 製造されたイカの刺身を梱包して、ラベル貼って冷凍庫へ入れるの繰り返しです。作業的にはシンプルで、10分教えればすぐできる。でも数が多いので作業量は多いんです。ふるさとの納税以外の商品や、お取引先様によってルールが違うものもなどが混じってくると難しくなってきます。教えてもいいのですが、教えている間に自分がやった方が早いなと感じました。 おせんべいの出荷も簡単で、ふるさと納税分の仕事が早めに終わるような状況であれば、やってもらうこともありました。

補助金の書類作成業務

色々書類はありますが、小規模事業者持続化補助金と営業再開支援金は比較的少なめですね。資料は得意な人に外注して対応しました。比較的少ないと言っても時間は取られるので、そこは楽でした。

## 今回活用した制度

タイミー(スポット雇用サービス)

スキマ時間で働きたい人と、人手が必要な事業者をマッチングするサービス。

💰
補助率:手数料制(月額は利用状況による)
ここがポイント:発送業務(午前9:30-13:00)で募集。2週間のお試し期間を経て、相性の良い人材1名をパート雇用に転換。製造業務はマッチングしなかったため、発送に特化した。

小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)

小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度。

💰
補助率:2/3
📄
上限:200万円(災害枠)
ここがポイント:温風乾燥機2台を3台に増設、スルメ粉砕機を高性能化。想定外の良い変化として、せんべいの食感がサクッと良くなった。

営業再開支援補助金

被災した事業者の営業再開を支援する制度。

💰
補助率:2/3(中小企業者は1/2)
📄
上限:300万円
ここがポイント:地震で半壊した製造スペースの代替として、トレーラーハウスを設置。現在はトレーラーハウスがせんべいの製造場所になっている。

✍️編集後記

和平商店は補助金とスポット雇用サービスの両輪を上手に活用しながら、地元小木のイカを全国のお客様に届けていた。

補助金を活用した設備導入による煎餅の増産対応、商品性の向上に加え、タイミーを活用し、1名を直接雇用につなげるなど、成果に結びついていると感じた。

一方で、専業のスルメイカ漁師の廃業が続き、燃料代の高騰なども重なり、イカの仕入れ値は10年前の約5倍。漁師が獲っても獲っても儲からない状況がある。

小木の特産品であるイカを仕入れ、加工して販売する和平商店のような事業者がいるからこそ、漁師も安心してイカ漁を行うことができるのであり、今回の事例のような成果が今後も続いていくことを願わずにはいられない。

能登百業録 編集部

河野 孝史